武道の稽古の時は道着を着て帯を結びます。この「結び」という言葉。
日本人にはとても馴染み深い言葉です。
炊いた米を握ったものを「おむすび」「おにぎり」と呼びます。「おにぎり」にも説がありますが、ここでは「おむすび」と呼ぶ訳を話しましょう。 「むす」という言葉には生み出すという意味があります。「び」は力。つまりおむすびを食べて力を得るというわけです。道着を着て帯を結ぶと気が引き締まるのも、力を得るからなのかもしれません。
ずいぶん昔に「森のイスキア」という所で「日本のマザーテレサ」と呼ばれる佐藤初女さんが、心が疲れてどうしようもなくなって助けを求めて訪ねて来る人達に「おむすび」を握ってあげるという映画を見ました。その大切に握られたおむすびを食べた人達は、心が救われたそうです。相手を大切に想う心が詰まった「おむすび」によって力が生まれ、心が癒されたのかもしれません。
また「おむすび」を漢字で書くと「御結び」。「結」という言葉はむすぶ、繋げる、まとめる、固まる、締めるなどの意味があります。そして「結」という字は協力しあって労働などをすることやする人という意味もあるそうです。
皆で協力しあって何かを成し遂げ、力を得る。私達は何気なく日常行なっているこの「結び」で前進する力を得ているのでしょう。日本語で「縁」を結ぶとも言います。私達は、人とも物事とも何かしらの「縁」で結ばれています。先ほどの話の佐藤さんと助けと必要として訪ねた方達も、「縁」で結ばれたからこそ佐藤さんのおむすびを食べる機会を得たのでしょう。
この「結び」に心から感謝し、道着の帯をしっかりと結び、智誠館のモットーである「共に学び、共に助け合い、共に成長する」を胸に、今年残り少ない稽古に励みます。
皆様、どうぞ健康で良い新年をお迎え下さいませ。
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