「礼儀」を辞書で調べると「対人関係での気配りや敬意、慎みの気持ちに基づく行動の規範」と記載してあります。簡単に言えば、敬意を持って人に接しましょうという事です。
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皆さんがご存知のように武道では「礼に始まり礼に終わる」と言います。稽古の初めと終わりに先生と生徒が礼をします。勿論、武道を通して教える「礼儀」とはただ頭を下げて礼をするだけではありません。自分の成長の為に相手をしてくださる方に対して、学ぶ場所に対して、またこの武道の教えを創られた先生方、それらを受け継ぎ指導してくださる先生方に対して感謝をし、礼をするのです。
最近はS N Sが発達し、LINEやメールで連絡を取ることは普通です。智誠館においてもグループラインで、連絡を取ったり、欠席や遅刻の案内を受け取る事もあり、大変便利に活用しています。
ですが、今年に入ってから、このL I N E活用において大変残念な事が何度も起こりました。それは退会の旨をL I N Eのメッセージのみでする方が何名もおられた事です。退会しますという報告のみで、お別れの一言も無い方もいた事には、大変驚き、とても寂しく思いました。1ヶ月とかの短期でなく、1〜2年、さらには10年習っても、直接ご挨拶に来なかった方々もいました。直接挨拶に行く価値がないほど私の指導が良くなかったのだろうかと、しばらく落ち込みました。自分の家族の一員のように大切にしてきた生徒さんや、その保護者の方々に、その程度に思われていたのだと悲しい気持ちになりました。
この事柄によって、私が茶道を習っていた時を思い出しました。高齢(80代)の女性の先生の個人宅でのお教室でした。季節のご挨拶には何をお渡ししたら喜ばれるだろうと悩みました。きっと先生はお菓子などは他の方々から沢山いただいているかもしれないからです。ですがよく教室を観察してみると、綺麗に洗われてピシッとアイロンのかかっている何枚もの布巾を常時お稽古にご用意して下さっている事に気づきました。ですので、洗濯洗剤を感謝のご挨拶として持参することにしたのです。すると、先生もちゃんとお懐紙(茶道でお菓子をのせたりして使用する紙)を私の為にご用意して下さっていました。私はご指導くださっている先生への感謝を、そして先生も先生の教室に通い、先生のご指導を学ぶ私への感謝の気持ちを贈り物という目に見える形でしたのです。引っ越しの為、お稽古をやめる時のご挨拶には、最後の感謝の贈り物と一緒に今までのご指導のお礼をお伝えしました。先生は「戻る時あれば、連絡くださったらお茶をご用意しますからね。是非飲みにいらしてね」と温かな言葉で気持ちよく送り出してくれました。
これは、国籍や文化の違いは関係ないと思います。何故なら、L I N Eのみで退会連絡をした方々は皆さん日本人だからです。逆に2ヶ月とかの短期でいらした海外から学びにいらした生徒さん達の中には、最後の稽古に手書きのお礼の手紙とお礼の品を持ってきた方々もいます。そういう手紙や品がなくても、ちゃんと顔を見せてお別れの挨拶を言いに来てくれた生徒さんも海外の方です。
日本人ならば、このような常識や礼儀は知っているだろうという私の思い込みがあり、教えなければならないと思ってもみませんでした。ですが、既存の門人達が他の人に私が感じたような思いをさせないよう、やはりしっかりと教えなければならないと認識しました。
多分残念な行為をされた方々にとっては、普段からL I N Eやメールの連絡で済ましていれば、それらの行動は彼らにとっての常識なのだと思います。遠く離れた他県や海外にいるのならばしょうがない事もありますが、日本国内であれば郵送や宅配便という便利なサービスを利用する事に気づいていないのかもしれません。便利な世の中だからこそ、手紙を書くという自分の時間を割き手間をかける行為は、感謝の意を形として表せるのではないでしょうか?
最初に「礼儀」とは「敬意を持って人と接する事」と書きました。今月は門人さん達に、この「礼儀」の学びを、普段感謝の意を明確に伝えていない身近な人に表すという宿題として出します。ご家族、友人だけでなく、道でいつも交通整理をして安全に道路を渡してくれる方、新聞配達の方など、当たり前と思いがちな周囲の方々の行動に感謝の意を表す練習です。言葉、手紙、贈り物など色々な方法があります。そして感謝を伝えた時の相手の反応と、自分の気持ちの変化について、1ヶ月後に皆さんに発表してもらう事にします。さあ、何人の方に感謝の気持ちをちゃんと表す事が出来るでしょうか。とても楽しみです。私も良い発表ができるよう頑張ります。
これらの事から、武道の技だけでなく、武道の教えの「徳」の道徳をこのような形で教えていかなければならないのだと学びました。
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